理学療法
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はじめに

このページは、私が専門としている学問、理学療法について、理学療法の分野でアメリカ留学を希望する日本人理学療法士のために役立つ情報などを書いてみました。よってこのページは、読者が理学療法士であることを前提として書かれています。

米国での理学療法教育

米国では、理学療法養成課程の学部から大学院へのレベルアップが、私がアイオワで学び始めた2002年には終了していた。よって今、アメリカで理学療法士になるには、理学療法士の養成校に入る前に、大学を卒業しておく必要がある。大学での専攻で多いのは、生物学、運動科学(exercise science)など。

理学療法の養成課程には修士レベルのMPT(master of physical therapy)と博士レベルのDPT(doctor of physical therapy)がある。どちらも学士取得後のプログラムで、単位数の違いでMPTかDPTかになり、どちらを卒業しても同じ国家試験を受けることになる。また養成課程をentry levelと呼ぶ(例:entry level DPT)。

すでに養成課程を修了し、さらに勉強して、教育・研究方面に進みたいという人が取るのがadvanced degreeで、やはり修士レベル(MS/MA)と博士レベル(Ph.D.)とある。Entry levelの修士(PT養成課程)に対して、advanced degreeの修士レベルをadvanced masterといい、入学には学士号が必要。Ph.D.に関しては、大学によっては学士からのストレート(入学時に修士号を必要としない)のプログラムもある。

最近では養成課程もMPTからDPTへの移行がかなり進んでおり、うちのアイオワ大学では2003年からDPTがスタートした。今までは六十数単位で卒業だったのを一気に百単位近くまで増やした。しかし卒業までの期間を二年半から三年へ延長しなかったのは学費が二年半のほうが安く済むからという配慮からだそうだ。その分新学期である秋学期を待たずに、夏からはじめその後二回の夏を含め、二年後の12月に卒業する。

日本でも最低で卒業までに三年かかるので、一見すると二年半とは短いように思われるかもしれないが、全員が大卒で、しかも生物、物理、化学、生理学などは学部での専攻に関わらず、養成校入学前に履修しておくことが条件であることを考えれば決して短くないと思う。

advanced かentry levelか?

自分が大学院で修士を目指したとき、entry levelかadvancedか、迷った。結局advanced masterにしたのだが、その理由はというと、

  • いくらアメリカでも養成課程は日本と基本的に同じだと思った
  • advancedの方が金銭的に楽(学費が安い上に、研究室で仕事が出来る)
  • advancedの方が留学生として入学しやすい (advancedには今まで何人もの留学生が入学しているのに対して、entry levelの方は100%アメリカ人)
  • アメリカの養成課程を出ていなくても、アメリカでのPTの資格試験は受験可
等である。 Advancedに入って、全く後悔していないが、entry level に入ったとしても、それはそれで、基礎がしっかり復習できる、資格試験の受験、合格がしやすくなるなどの利点はあっただろう。

結局自分が将来何をしたいかによると思う。自分の場合ははっきり教育、研究方面に行きたいとわかっていたのでそれほど迷わなかったが、もし「アメリカで資格をとって臨床をしたい」というのであれば、当然entry levelで勉強しなおしたほうが楽。

自分が希望していたのはadvanced masterかストレートのPh.D.かだったのだが、なるべく修士課程に入りたかった。大学卒業間際だった当時でも博士号には興味はあったが、それまで研究など全くやったことがなかったので、はたして自分に向いているか、好きになるか、というのが分からなかったからだ。修士なら二年だし、もし研究が面白くないと思ったら博士課程に進学せず何かほかのことをやろうと思っていた。ストレートのPh.D.の場合、まじめにやっていれば四年、一方修士→博士の場合は修士二年、博士三年で五年はかかるので、ストレートのほうが一年早く卒業できるわけだが、ここまで来たら一年などたいした差ではない。

私が入学する大学院を探していたのは2001年だが、選択肢の少なさを感じた。自分が興味を持った大学に連絡を取ったときに、「もうadvanced masterの生徒は受け入れていない」という答えが返ってきたのが何校かと、「アメリカでのPT免許とアメリカでの臨床経験が必要」 と言われたのが何校かあった。Advancedc masterを閉鎖すると言うのはよく分かる。なぜなら、今では養成課程を卒業した後(MPTあるいはDPTを取得した後)さらに研究したいというのであれば、advanced masterに入ることなく、直接Ph.D.に入ることになるからだ。つまり今のadvanced masterは、まだ養成課程が学部にあったころにPT教育を受け学士しか持っていない少し年配のPTか、養成課程が学部にある国でPT教育を受けた外国人かを対象としていることになる。

アメリカでのPT免許、臨床経験が必要というのも、advanced masterへの入学時に理学療法士であることが大前提なのを考えると納得いく。

これらの点をクリアして残ったのがアイオワ大学(advanced master)、ミネソタ大学(Ph.D.)とニューヨーク州立大学バッファロー校(PT以外のmaster、excersice science?)で、このうち金銭援助が確実に受けれると分かっていたのが唯一アイオワ大学だった。

今まで取った授業

カッコ内の数字は単位数。

2002年秋学期

  • Biomedical Instrumentation and Measurement(4)
    高校、大学の物理で習った電気の復習から始まって、研究に必要な計測に関する知識(エラー、calibrationの方法など)、研究に使う機器(load cell, amplifier, filterなど)の仕組みなど。実験、コースプロジェクトなどもあり忙しく、また内容的にも難しかった。
  • Introduction to Biostatistics(3)
    統計の最初のクラス。ここではかなり広く浅く習ったおかげで、いつどの統計処理をするのかというのを理解するのが難しかった。毎週宿題が山のように出て、週末はかなりこれに時間を割いたことを覚えている。
  • Sensory Motor Analysis in Health & Disease(3)
    基本的には、養成課程の生徒がとる授業で、Principles of Motor Controlという授業がもととなっている。骨格筋の随意的コントロールについてや脊損のリハについてなど。読んでも読んでも終わらない分厚いreading packetを頂いた。
2003年春学期
  • Applied Electromyography(3)
    筋電図の授業で、はじめに講義を受けて、その後割り当てられた論文をクラスのみんなに説明するというのが基本的な形式。テストがまったくない代わりに、最後の一ヶ月ちょっとで研究プロジェクトをひとつ(クラス全体で)学期末までに終わらせ、論文提出とプレゼンをした。提出の前日は、クラスのみんなで夜中の12時過ぎまで研究室に残って論文を書いていたのが懐かしい。
  • Analysis of Scientific Literature(3)
    名前通り、論文の長所、短所が指摘できるように指定された論文を読んで、その長所、短所をレポートにまとめたり、生徒が論文を選んできて、その論文についてクラスでディスカッションを行う。ディスカッションであるので当然しゃべることが期待されていたし、この論文を選ぶのが自分の番にまわってきた場合はディスカッションをリードしなければならなかったりと、クラスでの発言があまり得意ではない自分(日本人一般?)にはちょっと大変だった。テストの代わりに分厚い研究費申請書を提出した。
  • Design & Analysis of Experiments in the Biomedical Sciences(3)
    一学期目にとった統計のクラスの上に当たるもの。習ったのは基本的にregressionとANOVAのみ。先生がオーストラリアの人で、そのアクセントに慣れるのに苦労した。
2003年夏
  • Independent Study(2)
    これは、アドバイザーと相談して課題を決め、出来たものをアドバイザーに見てもらいそれが登録した単位数に相当するとみなされれば、単位がもらえるというもの。このときはthe effect of joint angle or muscle length on muscle fatigueというタイトルでliterature reviewを書いた。
  • Practicum in Research(2)
    Independent Study同様、アドバイザーと相談して課題を決めるが、こちらは実際にデータを集めたり処理したりと研究活動をする。このときは筋疲労とふるえの関係をテーマにデータを集めた。
2003年秋学期
  • Exercise Physiology(3)
    Exercise Science学科の授業で、運動生理学を広く浅く学んだ。広くカバーするため分野により先生が変わり、教え方が微妙に違うので少し戸惑った。でも一番つらかったのは、それよりもテストよりも、授業が朝7:30に始まるということだった。
  • Thesis(3)
    このころから修士論文を書き始める。修士の場合、前の学期にとったAnalysis of Scientific Literatureで研究費申請書を書くときに使った研究テーマがそのまま修士論文のテーマになることが多く、自分の場合もそうだった。私の修士論文では、the effect of central drive on fatigue-induced unsteadinessというタイトルで等尺性収縮時に筋疲労が引き起こすふるえとcentral drive(中枢神経系がmotor neuron poolに対して送るexcitatory drive)の関係をテーマにした。
  • Teaching Practicum(1)
    Advanced Degree Programでは、将来の研究家を育てると同時に教育者も育てるので、養成課程の生徒を対象に実際に授業を持たされる。修士に必要な単位数は一単位なので一時間の授業でオーケー。このころ養成課程の生徒は授業の一環として研究プロジェクトに参加しており、来学期にその結果を発表するために、アドバイザーがPowerPointの使い方を教えるところだったので、これを代わりにやらせてもらった。
2004年春学期
  • Thesis(3)
    引き続き、論文。私の場合、このころお世話になっていたアドバイザーが三月いっぱいで他の大学に移動することがわかっていたので、三月中ごろには論文を書き上げ、その月末に審査をしてもらった。
  • Skeletal Muscle Biolgy(3)
    これもExercise Science学科の授業でこのときに所属していた研究室の研究に非常に役立つ授業だった。頻繁な試験、クイズ(小テスト)に膨大なreading assignmentと大変だったが、面白い授業だったのも事実。
  • Independent Study(2)
    論文が三月中に書き終わってしまったので、これを再びとった。ここでは、修士論文をmanuscriptのかたちに書き換えた。
2004年秋学期
  • Occupational Ergonomics I (2)
    職場の環境に労働者をあわせるのではなく、労働者が働きやすいように職場の環境を改善しよう、というのがergonomics。心理的、精神的なアプローチも出来るが、授業では身体的、物理的なアプローチを中心に学んだ。日本でもPTが増えるに従って、こういう方面で活躍する人が増えるのでしょう。
  • Fundamental Neuroscience (4)
    DPTの学生が医学部の生徒とともにとるMedical Neuroscienceと違い、臨床的な話はほとんどなし。学部生、院生と別々に成績がつけられ、院生はほぼ全員neuroscience 専攻。講義そのものは、かなり面白かったが、試験があきれるほど難しかった。

研究活動

入学願書を提出する前に、その大学にある研究室のリスト(どんな研究が行われているかが書かれている)を見て、自分がどこに所属したいかを決め、その研究室のボスに連絡を取る。無事入学すればその研究室に所属となる。自分は新学期の始まる一ヶ月くらい前には渡米しており、その後住まいを決めたりして新学期の始まる二、三週間前から研究室に顔を出して、ソフトや機器をいじっていた。

この研究室では週一回のlab meetingとjournal clubが行われる。Lab meetingでは研究室のボスからの連絡事項を聞いたり、私たち生徒がそれぞれ今、何に取り組んでいて、それがどこまで進んでいるかということを連絡しあう。Journal clubではあらかじめ指定された論文を読んできて、その論文について長所、短所、質問などをみんなで話し合う。

自分が新しく研究室に入ったときには他に生徒が二人いたが、その二人とも授業をとり終わった三年以上博士課程に在籍していた学生で、自分にとっては、少しでもこの生徒たちに追いつけるようにと、いい意味でのプレッシャーとなった。

修士の一年目は一学期に三クラスずつ取っていたので、授業のないときに研究室に行き、ボスからいただいた課題(はじめなので簡単なデータ処理が多かった)をやるくらい。それに対し、修士も二年目になると、とる授業も一つくらいで後は研究室に入り浸る日々が続く。このように夕方まで大学で授業に出ているか、研究室で仕事をしているかで、その後ノートまとめ、宿題、テスト勉強、論文読みなどをするため、平日はかなりきつい。論文の締め切りが近くなると朝から夜中まで研究室にいて、家には寝に帰るだけという生活が続いた。

アンケート結果より

うちのプログラム内でのニュースが年に何度か小冊子のような形で学科にある個人の郵便受けに入れられるのだが、こないだ面白いアンケート結果が載っていたので、ここで紹介したい。タイトルは"Employment Survey of MPT class 2003"で、つまり養成課程(2003年はまだMPT)卒業後の就職状況についてのアンケートだ。

35人がこの年に卒業し、そのうち32人がアンケートに答えた。どういったところに就職したか、仕事を見つけるまでの平均何週間要したか、などへの回答もあるが、やはり一番気になるのは給料だろう。

今回の場合、最高年間$56,000、最低$37,000、平均$45,000となっている。このほかに全く手当などがつかないとしたら、月々は最高、最低、平均でそれぞれ、約$4670(約51万円)、約$3080(約34万円)、$3750(約41万円)となる(1ドル=110円で計算)。

最近の日本のPTの初任給がいくらかは全く分からないが(わかったら誰か教えてください)、日本とアメリカでは物価も違うし、卒業までの年数も違うので、直接比較は出来ないだろう。

今年の12月に卒業する生徒たちが、うちの大学にとっては初めてのDPTになるわけだが、卒業にかかる年月こそ同じだが、単位数が六十数単位から約百単位へと大幅に増加し、卒業にかかる費用も増加している。これに伴い給料がどれだけかわるのか、興味あるところだ。

博士号取得までの予定

アイオワ三年目とはいえ、PhDは一年目なので、plan of studyというものを入学して9単位とり終わる前に提出し承認を得るのだが、それが問題なく帰ってきたのでここに載せてみた。

この予定通りに行けば、2005年の暮れには授業がとり終わり、2007年五月には卒業となっている。授業を取り終えてからもいろいろあるのだが、そういう時期が近づいてきたら、改めて情報を掲載する予定。

この予定、見た目にはいいが、一つだけ心配なことは、一つ一つの授業の負担が大きすぎるということ。そのおかげで研究のほうに割く時間が限られてしまう。授業を取り終わって、いざcomprehensive exam(口答試験)、thesis proposal meeting(こういう研究をやります、ということの発表)という時までに、いったいどれだけの論文が書けるのだろうか、とちょっと不安。

2004年秋学期

  • Occupational Ergonomics I (2)
  • Fundamental Neuroscience (4)
2005年春学期
  • Biomechanics of Human Motion (4)
  • Seminar in Motor Control (2)
2005年秋学期
  • Teaching & Learning in Higher Education (3)
  • Design of Experiments (4)
2006年春学期
  • Advanced Seminar in Rehabilitation Science (3)
2006年秋学期
  • Teaching Practicum (2)
  • Thesis (6)
2007年春学期
  • Thesis (6)